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経常収支とは?意味・内訳・貿易収支との違いをわかりやすく解説

経常収支とは、ある国の居住者が海外とのモノ・サービス・所得などの取引で受け取った金額と、海外へ支払った金額の差を示す統計上の指標です。貿易黒字や赤字だけでなく、海外投資から得る利子・配当、旅行や特許使用料、援助なども含めて、国の対外的な取引による収支状況を総合的に見るために使われます。

タグ: #経常収支
📖 約7分で読めます 📅 公開日: 2026年05月20日 🔄 更新日: 2026年05月20日

定義

経常収支は、財務省「用語の解説」では「貿易・サービス収支、第一次所得収支、第二次所得収支の合計」とされています。金融収支に計上される取引以外について、居住者と非居住者の間で発生する取引の収支状況を示すものです。ここでいう居住者は国籍ではなく、経済活動の拠点がどこにあるかで判断されます。

経常収支は、次の式で表されます。

\[ 経常収支 = 貿易・サービス収支 + 第一次所得収支 + 第二次所得収支。 \]

内訳は三つです。第一に、輸出入や旅行、輸送、知的財産権等使用料などを含む「貿易・サービス収支」。第二に、海外資産から受け取る利子・配当や、海外投資家へ支払う利子・配当、直接投資収益などの差を示す『第一次所得収支』。第三に、政府の無償資金協力や国境を越えた個人送金など、対価を伴わない移転を含む『第二次所得収支』です。

そのため、経常収支は「輸出が多いか少ないか」だけを示す指標ではありません。日本では、2020年以降貿易・サービス収支が赤字でも、第一次所得収支の黒字が大きいため、経常収支全体では黒字になる局面がほとんどです。2025年の7月においては貿易収支は-8,849億円ですが経常収支は2兆6843億円となっており、大きな黒字となっています。

具体例

たとえば、日本の2025年7月の経常収支について考えましょう。財務省の「令和7年7月中 国際収支状況(速報)」によると、貿易・サービス収支は-8,849億円、第一次所得収支は4兆0,746億円、第二次所得収支は-5,054億円でした。

経常収支は、次の式で計算できます。

\[ 経常収支 = 貿易・サービス収支 + 第一次所得収支 + 第二次所得収支 \]

これを当てはめると、

\[ \begin{aligned} 経常収支 &=-8,849億円 + 4兆0,746億円 - 5,054億円 \\ &= 2兆6,843億円 \end{aligned}\]

となります。

つまり、2025年7月の日本は、貿易・サービス収支と第二次所得収支では赤字でしたが、第一次所得収支の大きな黒字によって、経常収支全体では2兆6,843億円の黒字になりました。

この例からわかるように、経常収支は「輸出入だけ」で決まるわけではありません。日本では、海外投資からの利子・配当などを含む第一次所得収支が、経常収支全体を押し上げることがあります。

家計にたとえるなら、商品の売買による収入・支出だけでなく、配当や利子、仕送りの受け払いまで含めて、外部との収支を見るようなものです。

ただし、第一次所得収支に含まれる海外投資収益のすべてが、実際に日本国内へ送金されているわけではありません。海外子会社が利益を現地で内部留保・再投資した場合でも、日本の親会社に帰属する分は「再投資収益」として第一次所得収支に計上されます。そのため、経常収支の黒字は「日本に現金が戻ってきた金額」と同じではありません。

経常収支を見るときのポイント

経常収支を見るときは、黒字か赤字かだけで判断しないことが重要です。黒字は「良い」、赤字は「悪い」と単純に言い切れるものではなく、どの項目が全体を動かしているかを見る必要があります。

たとえば、貿易収支の赤字が拡大している場合でも、エネルギー価格の上昇、円安による円建て輸入額の増加、国内需要の強さなど、その要因は複数あります。また、第一次所得収支の黒字が大きい場合は、過去の海外投資からの収益が日本に入っていることを示しますが、その収益が国内の賃金や設備投資にどの程度つながるかは別の論点です。

加えて、サービス収支にも注目する必要があります。訪日外国人旅行者、つまりインバウンドによる消費は、サービス収支の旅行項目に反映されます。一方、海外のITサービス利用料やクラウド利用料、動画配信、広告関連の支払いなどはサービス収支の赤字要因になることがあります。経常収支は、製造業、投資、観光、デジタルサービスなど、日本経済の構造変化を読む手がかりになります。

貿易収支との違い

貿易収支は、財貨、つまりモノの輸出入の差を示す指標です。自動車、半導体関連部品、原油、液化天然ガス、食料品などの輸出入が対象になります。一方、経常収支は貿易収支を含みますが、それだけではありません。

経常収支には、旅行や輸送、知的財産権等使用料などのサービス収支、海外投資からの利子・配当を含む第一次所得収支、無償援助や送金を含む第二次所得収支も入ります。そのため、「貿易赤字だから経常赤字」とは限りません。貿易収支は経常収支の一部であり、経常収支はより広い概念です。

国際収支との違い

国際収支は、一定期間における居住者と非居住者の経済取引を体系的に記録した統計全体を指します。経常収支は、その国際収支の中の主要な項目の一つです。

国際収支には、経常収支のほかに、資本移転などを扱う資本移転等収支、金融資産や負債の増減を示す金融収支などが含まれます。統計上は、記録上のずれを調整する誤差脱漏もあわせて示されます。たとえば、海外の株式や債券を買う、外国企業が日本企業に投資する、といった取引は主に金融収支で扱われます。経常収支は『モノ・サービス・所得などの取引による収支』を見る項目、金融収支は『対外金融資産・負債の増減』を見る項目と考えると理解しやすくなります。

関連用語

経常収支を理解するには、貿易収支、サービス収支、第一次所得収支、第二次所得収支、金融収支、国際収支、対外純資産、為替レートといった用語をあわせて押さえると読みやすくなります。

貿易収支は輸出入の差、サービス収支は旅行・輸送・知的財産権等使用料などの差を示します。第一次所得収支は海外投資からの利子や配当などに関係し、日本では経常収支全体を支える大きな黒字項目になりやすいため、特に重要な項目です。金融収支は、経常収支と混同されやすいものの、株式・債券・直接投資など資産取引の動きを示します。為替レートは、輸出入額や海外収益の円換算額に影響するため、経常収支の変化を読む際の重要な背景になります。