貿易収支とは?赤字・黒字の意味、計算式、経常収支との違いを解説
貿易収支とは、国際収支統計において、財貨、つまりモノの輸出額から輸入額を差し引いた収支を指します。輸出額が輸入額を上回れば貿易黒字、下回れば貿易赤字とされています。経済ニュースでは、輸出産業の動向、資源価格の上昇、為替レートの変化が輸出入額にどう影響しているかを見る手がかりになります。
定義
貿易収支は、国際収支統計において、財貨、つまりモノの輸出入の収支を示す項目とされています。ここでいう居住者・非居住者は、単純な国籍ではなく、経済活動の拠点が国内にあるか海外にあるかで判断される統計上の区分です。貿易収支には、サービスの売買や海外投資から得る利子・配当などは含まれません。
計算式は、基本的に「貿易収支=輸出額−輸入額」です。輸出額が輸入額より大きい場合は貿易黒字、輸出額が輸入額より小さい場合は貿易赤字と呼ばれます。たとえば輸出には、自動車、半導体関連機器、機械、鉄鋼などの財貨の海外向け取引が含まれます。一方、輸入には、原油、液化天然ガス、食料品、医薬品、衣類などの財貨の国内向け取引が含まれます。
ただし、統計を見るときは、財務省の「貿易統計」と、財務省・日本銀行が公表する「国際収支統計」の貿易収支が、完全に同じ基準で集計されているわけではない点に注意が必要です。貿易統計は、税関を通過した貨物を通関ベースで集計する統計です。一方、国際収支統計の貿易収支は、居住者と非居住者の間で所有権が移転した財貨を対象に、IMF基準に沿って調整されます。そのため、同じ『輸出入』を扱っていても、建値、計上範囲、計上時点の違いにより数値が異なることがあります。
具体例
ここでは、財務省「国際収支状況」における貿易収支の数値を例にします。
たとえば、日本の2025年7月においては、輸出額は9兆0,063億円となっています。一方で、輸入額は9兆1,956億円となっています。
貿易収支は、輸出額から輸入額を差し引いて計算されます。
2025年7月の場合、表示額をもとにすると、次のように計算できます。
ただし、財務省が公表している国際収支統計では、この月の貿易収支は1,894億円の赤字となっています。表示単位の丸めにより、輸出額と輸入額の表示額から計算した差額と、公表されている貿易収支の金額がわずかに異なる場合があります。
反対に、日本の2025年6月においては、輸出額は8兆9,627億円です。一方で、輸入額は8兆4,930億円でした。
2025年6月の場合、表示額をもとにすると、次のように計算できます。
ただし、財務省が公表している国際収支統計では、この月の貿易収支は4,696億円の黒字となっています。こちらも、表示単位の丸めによって、表示額から計算した差額と公表値がわずかに異なります。
このように、貿易収支は「海外に売ったモノの金額」と「海外から買ったモノの金額」の差を示す指標です。
ただし、貿易赤字だからといって、ただちに国全体の経済状態が悪いとは限りません。輸入額は、輸入価格と輸入数量の両方に左右されます。資源価格の上昇で輸入額が増えることもあれば、国内需要が強く、企業や家計による輸入数量が増えることもあります。
貿易収支を見るときのポイント
貿易収支を見るときは、黒字か赤字かだけで判断せず、何が輸出され、何が輸入されているかを見ることが重要です。例えば日本のようにエネルギー資源の多くを輸入に頼る国では、原油や天然ガスの価格上昇が輸入額を押し上げ、貿易赤字を拡大させることがあります。
為替レートも重要な要因です。一般に、円安になると外貨建て輸出の円換算額は増えやすい一方、輸入品の円建て価格も上がりやすくなります。そのため、円安になれば必ず貿易黒字になるとは限りません。輸出数量、輸入数量、資源価格、企業の海外生産比率などもあわせて見る必要があります。
また、輸出入額は月ごとに大きく変動することがあります。大型船舶、航空機、エネルギー関連取引など、一部の大きな取引が月次の数字に影響する場合もあります。大型船舶や航空機、エネルギー輸入など、一部の大きな取引が数字に影響する場合もあります。短期の増減だけでなく、数か月から数年の傾向を見ることで、経済の構造的な変化を把握しやすくなります。
経常収支との違い
貿易収支と間違えやすい用語に、経常収支があります。経常収支は、貿易収支とサービス収支を合わせた貿易・サービス収支に、第一次所得収支、第二次所得収支を加えたものです。
サービス収支には、旅行、輸送、知的財産権使用料、金融サービスなどが含まれます。第一次所得収支には、海外子会社からの配当や債券の利子など、投資から得られる所得が含まれます。第二次所得収支には、対外援助、国際機関への拠出、個人間送金など、対価を伴わない移転取引が含まれます。
そのため、貿易収支が赤字でも、第一次所得収支が大きく黒字であれば、経常収支全体では黒字になることがあります。経済ニュースで「日本の経常収支は黒字」と報じられていても、同時に貿易収支は赤字というケースがあり得ます。
貿易統計との違い
貿易収支は「貿易統計」とも混同されやすい用語です。貿易統計は、税関を通過した輸出入をもとに作成される統計で、品目別、国・地域別、数量・金額別など、モノの貿易の詳細を確認しやすい統計です。
一方、国際収支統計における貿易収支は、居住者と非居住者の間の所有権移転を基準に、IMFの国際収支マニュアルに沿って調整された数値が使われます。たとえば輸入額について、貿易統計では運賃・保険料を含むCIF価格で計上されますが、国際収支統計では財貨の取引とサービスの取引を分けるため、輸入もFOB価格に調整されます。
関連用語
貿易収支を理解するには、まず輸出と輸入の意味を押さえる必要があります。輸出は国内から海外へモノを売る取引、輸入は海外から国内へモノを買う取引を指します。この差額が貿易黒字または貿易赤字として表れます。
より広い視点では、貿易収支は国際収支の一部です。経常収支には、貿易収支のほか、サービス収支、第一次所得収支、第二次所得収支が含まれます。貿易収支は、国際収支のうち経常収支を構成する項目の一つです。
統計を読む際には、FOBとCIFという価格条件も関係します。FOBは輸出国で船に積み込む段階の価格、CIFは貨物価格に運賃・保険料を含めた価格です。日本の貿易統計では輸出はFOB、輸入はCIFで集計されますが、国際収支統計では輸出入ともにFOBに調整されます。