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名目賃金とは?実質賃金との違いをわかりやすく解説

名目賃金とは、物価の変動を差し引く前の賃金を指します。給与明細や統計で示される控除前の支給額に近い考え方で、生活実感を見るには物価を考慮した実質賃金とあわせて確認する必要があります。

📖 約5分で読めます 📅 公開日: 2026年05月18日 🔄 更新日: 2026年05月21日

定義

名目賃金とは、物価上昇や物価下落の影響を調整する前の賃金を指します。簡単に言えば、労働者に支払われる控除前の給与額に注目する考え方です。

公的統計では、『名目賃金』という言葉だけを単独で定義するよりも、物価調整前の賃金を表す統計値として、厚生労働省の『毎月勤労統計調査』における『現金給与額』や『現金給与総額』が用いられることが多いです。」

同調査では、現金給与額は「労働の対償として使用者が労働者に通貨で支払うもの」とされ、所得税や社会保険料などを差し引く前の金額を指します。つまり、手取り額ではなく、控除前の給与額として扱われます。

また、現金給与総額は「きまって支給する給与」と「特別に支払われた給与」の合計とされています。ここでいう『きまって支給する給与』には、基本給などの所定内給与に加え、残業代などの所定外給与が含まれます。また、『特別に支払われた給与』には賞与などが含まれます。

計算式で表すと、現金給与総額は次のようになります。

\[ 現金給与総額 = きまって支給する給与 + 特別に支払われた給与 \]

また、統計上の名目賃金指数は、各月の1人平均現金給与額を基準時の1人平均現金給与額で割り、100を掛けて算出されます。

\[ 名目賃金指数 = 各月の1人平均現金給与額 ÷ 基準時の1人平均現金給与額 × 100 \]

これに対して、実質賃金指数は名目賃金指数を消費者物価指数で調整して求められます。

\[ 実質賃金指数 = 名目賃金指数 ÷ 消費者物価指数 × 100 \]

具体例

たとえば、ある人の月給が30万円から31万円に増えたとします。この場合、名目賃金は1万円増えたと見ることができます。控除前の支給額が増えているため、名目上は賃金が上がった状態です。

しかし、同じ期間に物価が5%上がっていた場合、31万円で買える商品やサービスの量は、以前の30万円のときより必ずしも増えているとは限りません。食料品、電気代、家賃、交通費などが上がっていれば、給与額が増えても生活の余裕はあまり変わらない可能性があります。

このように、名目賃金は『物価調整前の給与額がどのように変化したか』を見るための指標です。一方で、「生活が楽になったか」「購買力が高まったか」を見るには、物価の変動を反映した実質賃金も確認する必要があります。

見るときのポイント

名目賃金を見るときは、まず「どの範囲の賃金を見ているのか」を確認することが重要です。毎月勤労統計の現金給与総額には、基本給だけでなく、残業代や賞与なども含まれます。そのため、名目賃金が上がったとしても、基本給が上がったのか、残業時間が増えたのか、賞与が一時的に増えたのかは、内訳を見なければ判断しにくいです。

また、平均値で示される賃金は、全員の賃金が同じように上がったことを意味しません。一部の業種や高所得層の賃金上昇のほか、雇用形態や労働時間の構成変化によって、平均が押し上げられることもあります。ニュースで「賃金上昇」と報じられた場合でも、産業別、雇用形態別、年齢別などの違いをあわせて見ると、実態を理解しやすくなります。

さらに、名目賃金だけで景気や生活水準を判断するのは慎重であるべきです。賃金の額面が上がっていても、消費者物価指数がそれ以上に上昇していれば、実質的な購買力は下がる可能性があります。名目賃金は、賃上げの動きや労働者1人あたりの給与額の変化を見るうえで有用ですが、家計の負担感を見るには実質賃金や物価指標との比較が欠かせません。

間違えやすい点

名目賃金について最も誤解されやすいのは、「名目賃金が上がれば生活水準も必ず上がる」と考えてしまうことです。名目賃金は物価調整前の金額であり、購買力そのものを示す実質賃金とは異なります。

また、名目賃金は手取り収入と同じではありません。毎月勤労統計でいう現金給与額は、所得税や社会保険料などを差し引く前の金額とされています。そのため、実際に銀行口座に振り込まれる金額とは異なる場合があります。

さらに、名目賃金を基本給だけと考えるのも正確ではありません。現金給与総額には、きまって支給する給与に加えて、賞与などの特別に支払われた給与も含まれます。したがって、「賃金が上がった」という表現だけでは、基本給の上昇なのか、残業代や賞与の増加なのかを区別できません。

ニュースで名目賃金を見る際は、物価、賃金の内訳、平均値の性質を分けて考えることが大切です。

関連用語

実質賃金, 現金給与総額, 所定内給与, 所定外給与, きまって支給する給与, 特別に支払われた給与, 消費者物価指数, 購買力, 雇用者報酬, 最低賃金