実質賃金とは?名目賃金との違いと見方を解説
実質賃金とは、物価の変動を考慮した賃金のことです。給与として受け取る金額そのものではなく、その賃金でどれだけの商品やサービスを買えるかという「購買力」を見るための考え方です。
定義
実質賃金は、名目賃金を物価の動きで調整した賃金を指します。名目賃金が物価変動を考慮しない賃金額や賃金指数を指すのに対し、実質賃金は物価上昇や物価下落を踏まえた、賃金の実質的な価値を表すものです。
厚生労働省の「毎月勤労統計調査全国調査で作成している指数等の解説」では、実質賃金指数は「賃金の購買力を示す指標」と説明されています。同資料では、実質賃金指数は名目賃金指数を消費者物価指数で調整して作成される指数として扱われています。
計算式は、一般に次のように示されます。
ここで使われる消費者物価指数は、総務省統計局によると、全国の世帯が購入する家計に関係する財やサービスの価格の動きを総合的に測る指標とされています。つまり実質賃金は、賃金の金額だけでなく、食品、電気代、日用品、サービス価格など、家計に関係する財・サービスの価格変動を考慮して見る指標です。
具体例
単純な例として、ある人の月給が30万円から30万9,000円に増えたとします。この場合、個人の名目上の賃金は3%増えたことになります。
しかし、同じ期間に食品、電気代、日用品などの価格が全体として5%上がった場合、給与の金額は増えていても、その賃金で買える財やサービスの量は実質的に減ります。
実質賃金の伸び率は、概念的には次のように近似できます。
この例では
となります。つまり、給料の額面は増えているものの、物価上昇のほうが大きいため、購買力はおおむね2%低下したと説明できます。
別の例として、名目賃金が前年比3%増え、物価が前年比4%上がった場合、実質賃金上昇率は概念的に約マイナス1%となります。この場合も、給与額は増えていても、買える量はやや減ったと考えられます。
見るときのポイント
実質賃金を見るときは、名目賃金と物価の両方を確認することが重要です。実質賃金が下がった場合でも、必ずしも給与額そのものが減ったとは限りません。名目賃金が増えていても、物価上昇率がそれを上回れば、実質賃金は低下します。
ニュースなどで使われる実質賃金は、多くの場合、毎月勤労統計調査などに基づく平均的な賃金指標として示されます。個人の生活実感とは一致しない場合があります。家族構成、住宅費、税金、社会保険料、地域差、保有資産、受け取る手当などによって、同じ物価上昇でも感じ方は変わります。
経済ニュースでは、厚生労働省の毎月勤労統計調査や、総務省統計局の消費者物価指数とあわせて実質賃金が取り上げられることがあります。春闘による賃上げ、最低賃金の改定、企業収益、生産性、家計消費などを見る際にも、実質賃金は重要な関連指標の一つです。
ただし、実質賃金だけで景気全体を判断するのは単純化しすぎです。雇用者数、労働時間、企業の賃上げ動向、物価の内訳、家計の所得構造などもあわせて見る必要があります。
間違えやすい点
実質賃金は、手取り収入そのものではありません。税金や社会保険料を差し引いた可処分所得とは別の概念です。
また、実質賃金が下がることは、給与明細の金額が必ず減ることを意味しません。給与額が増えていても、物価上昇のほうが大きければ、実質賃金は下がります。
反対に、名目賃金が増えているから生活面で問題がない、とも言い切れません。また、実質賃金が上がった場合でも、税金、社会保険料、住宅費、家族構成などによって生活実感は異なります。重要なのは、その賃金でどれだけの財やサービスを購入できるかです。
実質賃金の低下を、すぐに企業が賃上げしていないためだと断定するのも不正確です。企業が賃上げをしていても、物価上昇率がそれを上回れば、統計上の実質賃金は低下します。
さらに、実質賃金は「生活が苦しいかどうか」を直接測る指標ではありません。生活実感を理解するには、家計調査、可処分所得、住宅費、資産所得、地域別の物価差などもあわせて考える必要があります。
関連用語
名目賃金、現金給与総額、所定内給与、所定外給与、特別に支払われた給与、消費者物価指数、インフレ率、購買力、可処分所得、春闘、最低賃金、労働分配率、生産性、家計消費、物価上昇率